理事長挨拶

久保 愛三

Kubo Aizoh

理事長

公益財団法人応用科学研究所は、エジソンが京都八幡の竹フィラメントで白熱電灯を発明した影響を受け、次代の技術開発としてのタングステンフィラメントの研究のために、大正6年、京都帝国大学青柳教授の研究所として創設されました。その後、財団法人応用科学研究所となり、高周波焼入れ技術を日本で初めて開発・実用化し、また、プラズマ窒化技術を独自に改良して企業活動に提供し、日本の機械技術ならびに機械産業の発展に貢献してまいりました。一貫して物理、化学、電気、機械、金属等の工学分野で、大学や公的研究機関ならびに技術革新を求める企業と連携して、基盤的かつ先進的な科学・技術の研究開発を行い、研究成果の実用化に取り組んでいます。

我が国は科学及び基礎技術の研究開発と、その成果を活用した工業技術の革新に基づく技術立国を国是としておりますが、先人たちが努力して築あげてきた豊かな社会の環境に慣れ、その「付け」として、日本の国際競争力は近年、低下しているように見受けられます。また、新興国や発展途上国の追い上げも激しく、これからも国民の豊かな生活を維持して行くためには、独自のアイデアに基づく基礎研究を工業技術に落し込むことが求められています。このような社会環境のもと、本研究所は独自のノウハウに基づく鉄鋼材料等の高周波焼入れとプラズマ窒化技術で、長年蓄積してきたノウハウを駆使し、また、鋼材の品質の問題を共に考えながら、仕上がり品質の向上を図り、企業各社の要請にさらに適切に対応できるように致します。また、従来からご好評を頂いております鉄鋼材料の確性試験・評価をさらに発展させ、機械部品用鋼材の品質を簡便かつ高精度に評価できる手法を開発しています。これは、将来のJIS規格の基となる日本歯車工業会規格の制定に対する主体的取り組みでもあります。また、新たな特別研究員や共同研究員の参加も得て、超伝導材料の機械的強度の向上の研究開発にも取り組んでいます。

産業界からの要請を受け、最新の機械加工機、3D幾何形状の超高精度測定装置、金属組織や元素成分分布の測定装置、高精度X線CT測定装置、X線残留応力測定装置等をそろえ、また、実績ある最高レベルの専門家オペレータをそろえ、たとえばCADで設計した機械部品の幾何形状に対し、現実に製造した品物がどの程度の形状偏差で出来ているか、その製品の加工面の粗さやうねりなどのミクロ形状はどのようになっているか、金属組織やその元素成分の分布状態ならびに硬さとそのバラツキの分布、残留応力状態はどのようになっているか、また、カーボン繊維積層材CFRP等の内部構造がどのようになっているか、エッジの詳細3D形状がどのようになっているかなどの評価が可能であり、研究目的以外にも様々な測定依頼ならびに材料の選定をも含む試作品の製造にも対応しています。また、歯車を始めとする機械部品のエッジの最適形状の高能率加工法、エッジがその機械部品稼働中に悪さをしないようにするエッジ改質技術、金属材料・機械部品加工面の表面改質技術に関する研究を進めており、商業的実施も可能です。

今後とも一層のご指導・ご支援・ご協力を賜りますよう、衷心よりお願い申し上げます。

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