応用科学研究所とは

大正6年、京都大学工学部電気工学科青柳栄司教授が青柳研究所を創設、昭和14年鳥養利三郎教授(後の第13代京都大学総長)に引継がれ、応用科学研究所となりました。

それ以降工学系で多方面の研究実績が上げられてきましたが、その中で戦後特に大きくこの研究所の財政基盤を作ったのが鉄鋼の高周波誘導加熱方式による強化処理技術(高周波焼入れ)です。

このほか後に追加されたプラズマ窒化技術を含め、機械部品の熱処理加工受託(収益事業)のための工場も持つようになっています。

当研究所は公的機関からの研究費や外部資金に負う所は大ですが、上記の収益事業に依拠して独自の研究活動を続けています。

高周波焼入れ技術の発祥の地

高周波焼入れ技術は、熱処理に必要なエネルギーが、他の処理法に比べて極端に少なくて済むなどの利点はありますが、精度を要する機械部品の処理を安定して行なうには高度のノウハウを必要とします。当研究所は高周波焼入れ技術の発祥の地として独自の技術を開発・運用しています。

応用科学・工学技術各分野の総合と地球環境の保全・向上

これまでの開発研究の成果で得られたノウハウを産業界の事業に生かし、その成果の普及を図るため、例えば以下のような活動を行っています:

  1. 機械部品に硬さと靭性を併せ持たせることが出来る複雑な硬さ分布の高周波焼入れ技術の開発と実用
  2. 発生する歪が少なく、表面異常層が軽微で硬さが高く、機械部品摺動部の耐摩耗性を向上させ、長寿命化を実現できるプラズマ窒化技術の運用
  3. モリブデンやタングステンなどの耐熱合金材料の高性能化に関する開発研究(更に能力ある研究者に研究の場を提供する特別研究員制度のもと、CO2排出減少に直接結びつく)
  4. EV用モータに必須の永久磁石の性能向上研究
  5. 超電導材料を用いた超電導インバータを含む超電導電力変換器の研究 など

本研究所の今後目指す方向は、日本の機械産業を支える技術を世界一のものとし、大局的に日本の産業を振興させ、学術文化の発展に寄与することにあります。委託を受けた研究についてもその成果の殆どが学術誌や学会で報告され、公益性を担保しています。

当研究所独自技術による社会への貢献(その他の公益活動)

鉄鋼製品の熱処理技術、表面処理技術に関する調査研究、技術指導等の委託を受け、また、事故あるいは破損品の原因調査、対策の提言、素材選択から表面改質などの指導、新規開発品の確性試験等の委託を受けています。

研究所独自の技術に加えて、研究者が広い分野から委託を受けて調査、技術指導をした数多くの経験とノウハウが、製品の改良と飛躍をもたらし、委託者から高く評価されています。

超電導技術の国際標準化に関するIEC-TC90(超電導)技術委員会のもとで超電導材料の臨界電流や機械的性質の標準測定の拠点としても活動しています。

その他、研究所のポリシーに貢献する重要機械要素材料の新しい品質評価法の開発や社会人教育のためのセミナー、太陽光発電国際会議の支援事業、およびシリコンカーバイド及び関連材料に関する国際会議の協賛なども行っています。

基盤技術の再開発と人材育成を目指す「機械基盤研究施設」

機械技術は日本の産業全体を支える基盤であるにもかかわらず、近年その空洞化が進み、現実に多くのトラブルが発生しており、それに伴い解決しなくてはならない多くの問題が発生しています。このような状況に対処するため、本施設は機械基盤技術の中でも特に鉄鋼と機械加工表面の特性解析、特性向上に関する技術を産業界と連携しながら開発しています。

本施設は、趣旨に賛同する企業からの寄付と各種設備の無償貸与により、平成27年(2015年)に活動を開始し、CADデータから現実部品加工、製品の幾何学形状精度ならびに材料の冶金学的特性、加工面の表面性状の実測確認までを一か所で出来る世界でも稀有の施設となっています。

収益事業としての「表面硬化熱処理受託事業」                                      

「脱炭素社会の実現に向けて、環境に優しい熱処理」として注目されている高周波焼入れ、プラズマ窒化技術を用い、試作品から量産品まで様々な熱処理の受託加工を請け負うことで、自主自立の研究所の財政基盤を支えつつ、ものづくりを通じても産業界に貢献しています。

概要

法人名公益財団法人 応用科学研究所
所在地〒606-8202 京都市左京区田中大堰町49
設立年月日創立:大正6年(1917年)11月8日
公益財団法人移行:平成23年(2011年)4月1日
目的学術及び科学技術の振興
理事長久保 愛三(京都大学名誉教授)
事業内容(1) 公益目的事業
公1:応用科学に関する工学分野の総合的研究機関として、特に地球環境の保全に貢献することに重点をおいた研究開発
公2:これまでの研究開発の成果で得られたノウハウを産業界の事業に生かすことにより、その成果の実用化と普及を図り、もって産業並びに学術の発展に寄与するなど公益に資する事業

(2) 収益事業等
収1:技術移転事業(表面硬化熱処理受託事業)