放射光の可視化技術で直接見えた磁石特性向上の指針 ~高耐熱サマコバ永久磁石はもっとタフになる!~

公益財団法人高輝度光科学研究センター(JASRI)、東京理科大学、公益財団法人応用科学研究所(RIAS)、東北大学は、大型放射光施設SPring-8 BL25SUの走査型軟X線磁気円二色性(Soft X-ray Magnetic Circular Dichroism: Soft XMCD)顕微分光装置を利用し、Sm2Co17系サマリウム・コバルト磁石(サマコバ磁石)の磁区が磁場印加によって変化する様子を鮮明に捉えました。

サマコバ磁石の磁区観察に関する先行研究では、磁気的に弱い部分が磁石内部の粒界にあることが指摘されていましたが、本研究では磁石内部に不純物粒として分布する希土類酸化物粒子と磁石粒子との界面近傍も主要な弱点であることを明らかにしました。つまり、粒界の改質(具体的には、磁性を弱める)、および、希土類酸化物の生成を抑制する生産プロセスを開発すれば、サマコバ磁石の特性がさらに向上すると考えられます。これにより、より高温下での使用ならびに高磁気特性の長期安定的な維持が可能になり、一般の工業製品はもちろんのこと、その他にも例えば、航空・宇宙分野などへの貢献が期待されます。

本成果は、JASRI 中村 哲也 客員主席研究員(本務所属は 東北大学国際放射光イノベーション・スマート研究センター 教授)、JASRI石上 啓介 博士研究員、隅谷 和嗣 研究員、梶原 堅太郎 主幹研究員、 東京理科大学 田村 隆治 教授、 加藤 涼(研究参加当時 修士課程2年)、丸山 涼(研究参加当時 修士課程2年)、RIAS 松浦 裕特別研究員が、JST産学共創基礎基盤研究プログラムの研究課題 「永久磁石の微細組織とその局所磁気特性の解析による高保磁力化の指針構築」(JPMJSK1617)の下で実施したものです。

今回の研究成果は、米国物理学協会の学術雑誌「Applied Physics Letters」オンライン版に7月15日に掲載されました。